美しいまちに調和する「木」の家づくり外構部木質化のススメ

街並みにひときわ美しさと癒しを与える「木」を使った塀や柵がある建物。

家の中だけでなく、外との接点を作りだす外構部の木質化は美しいまちに調和する。

家づくりへと繋がる、景観だけでない、安全や健康にも美しい「木」の家づくり、外構部木質化のススメ。

外構部の木質化の嬉しいこと

環境
街並

国産木材を活用した木堀、木柵などを外構部の木質化が進むことで、美しい街並みの景観を担うだけでなく、地球温暖化防止や一定の間伐を促進し健康な森林づくりなどに貢献されます。

安心
健康

天然の木材は、香りや木目の美しさ、吸音など健康に良く、結露を防ぐことから安全と言われています。また、木塀は、防災の観点から安全な通学路確保の対策としても注目をされています。

例えば、こんなところを木質化
木で美しい家づくり

玄関へのアプローチ

玄関へのアプローチ

自転車置き場

自転車置き場

車止め

車止め

門扉

門扉

木の塀

木の塀

ウッドデッキ

ウッドデッキ

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まちに調和する家づくり木質化のススメ
「木」を用いた美しいまちづくりを、実績例含めてご紹介します。
豊かで新しいまちの景色をつくる、
国産材をつかった建物と外構部の木質化

内装に木材をふんだんに利用した「Design LAB Tsukishima」や、屋根がウッドデッキになった「ふじようちえん」などのように、近年、国産材をつかった建物の木質化が進んでいます。「木」の家づくりはもちろん、まちの景観の改善、サービス向上や労働環境や生活環境の改善をめざす都市部の企業、病院や学校などでも顕著です。

現在のこうした木質化は、どのようなきっかけで始まったのでしょうか。また今回取り上げる「外構部の木質化」ではどうでしょうか。その現状や木質化を進めるための基礎知識について、全国木材協同組合連合会の肥後賢輔(ひごけんすけ)さんにお話を伺いました。

木質化の流れとメリット

国内の木質化促進の取組みは、この10年ほどで林野庁を主導に行われるようになった活動です。かつて、国内の建築が木造ばかりだったことは歴史的にもよく知られた事実ですが、歴代の大震災や大戦による火事被害、1950年の建築基準法の制定もあり、都市部に火に弱い木造は適さないという認識が一般化。さらに高度経済成長期や人口増加も手伝って、大規模建築といえば強度・耐火重視のRC建築が定着しました。ですが、戦後70年以上が経ち、建材加工や工法の技術は飛躍的に進歩を遂げ、まち(都市)と人、建築と環境の関係性を見直そうという議論が交わされるようになりました。

そんな中、2010年に成立したのが、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」です。木造率が低い公共建築への木材利用が新たに注目され、耐火基準も満たした木造の大規模建築も少しずつ増加。2015年からは、優れた木造建築や木製品などを表彰する「ウッドデザイン賞」も始まり、“木のある豊かな暮らし”のPRが進められるようになりました。この、まち(都市)づくりに木材が再び重視されつつある理由を、肥後さんは林業の視点から語ってくれました。

「個人住宅の木材需要の低下と国産材資源の充実が大きな要因になっていると思います。住宅需要の低下は木材需要と密接に結びついており、ピーク時は年間140万戸もあった新築住宅着工戸数は現在90万戸台、野村総研の予測では、2030年には60万戸台に落ち込むとされています。ですから、この需要減分をどこかでカバーする必要があったのです。

一方、国内で育ててきた人工林がかなり充実し、国内の年間木材利用量を1年間の人工林の成長分だけで賄える状況になっています。この2つの実態を結び付けるという視点で、都市部のビルや病院、企業の建物の内装を中心に国産材の活用提案が行われるようになったのです。ちなみに、首都圏や近畿圏などの都市ビルのフローリングがすべて木質化されると、1,000万立方メートルの木材需要が生まれるとの提言も公表されています。(肥後さん)」

南陽市新文化ホールでは、木造建築ならではの省エネ効果が明らかとなった。建設時、鉄筋コンクリート造ホールの実績から算出した年間光熱費は4,500万円だったが、実際は約3分の1の1,440万円。木造の断熱性や木の湿度調節効果により室温・湿度が年間を通して安定、空調にかけるエネルギーを抑えて維持管理費としての光熱費を節約することができた。

自然素材である木材には、軽さと高い強度、高い温度調節力や通気性、人を健康にする成分、建築工期やコストの圧縮など、いくつもの利点があります。たとえば、5階建RC造マンションを建て替える場合、同じ基礎や土台であれば8階建にできてしまう。木材がコンクリートの5分の1の軽さながらも、強度は2~4(圧縮強度、引張強度)もある特性を持つからです。また温度・湿度の調節機能や通気性の高さは、室内温度を安定化する作用があるので加除湿の費用を抑えられる。つまり、施設の維持管理費の削減にも繋がるのです。

本文_木村早苗

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楽しさと機能性を両立する、
国産材をつかった建物と外構部の木質化の実践例

近年、国産材をつかった建物の木質化が進んでいます。「木」の家づくりはもちろん塀や柵などの外構部も含め、まちの景観向上や改善の面で注目される機会が増えてきました。では、一般住宅への木質化を進める場合や、住宅と街並みの関係を考える上ではどんなことを意識すべきなのでしょうか。

そこで連載第2回は、建築士の長崎昭人さん(独楽蔵)、町田暁郎さん(株式会社and.一級建築士事務所)のお二人にお話を伺いました。

楽しさと機能性を両立した木のあしらい

施主の要望に加え、雑談を通じて好みや嗜好を掬いながらデザインを決めていくという建築士の長崎昭人さん(独楽蔵)。

「家を新しくすると生活が変わり、生活が変わると人生まで変わる。それくらい影響があるので、デザインというよりはその方の暮らしを整理し、人生を一緒につくることだと考えています。(長崎さん)」

建築家のお任せでかっこいいものを、という家づくりが多かった80年代に較べると、もう少し施主が関わるような家づくりが増えた現在。住宅にかける金額を抑える傾向もあってか、竣工が完成ではなく、徐々に手を加えたり、住みながら少しずつ仕上げたりする事例も増えています。そうした「自分の家づくりに参加したい」というニーズを活かせるよう、つくり込みすぎないものを提案するという長崎さん。

こうしたデザインや素材選びの考えがよくわかるのが、埼玉県入間市にある自社アトリエです。豊かな樹木が並んだ庭の中心にあるアトリエは、木材を活用したアイデアが満載。各部屋の床や扉への木のあしらいはもちろん、1階の屋根を活用した屋上庭園、庭に開いた2階の部屋には木の浴槽やウッドデッキリビング。また、外からも中からも移動できる水平にも垂直にも広がる楽しいつくりが特徴です。

独楽蔵さんのWebサイトより アトリエ 半地下ホール

写真提供元:独楽蔵

「アトリエでイベントや作業をしていると、人の目を惹くんです。裏を返せば、趣味でも家仕事でも、住人の活動が見える家だとそれだけで通りも楽しくなるってことですよね。だからこういう楽しげな建物が2、3軒あれば、通りも地域も活性化できるんじゃないかなと。そんな刺激的でまちに開いた家をめざしています。(長崎さん)」

ただ、木の耐久性やメンテナンス性を上げるためには、知識と工夫も必要です。南側は紫外線で老化しやすく、北側は湿気が多いので苔が生えやすい。こうした環境による影響からは、やはり逃れられません。そこで家の裏になる場合が多い北側には無理に木を使わず、耐久性やメンテナンス性重視でガルバリウム合板のような硬質材の組み合わせを提案することもあるそう。

「木材は狭い面積でも目を惹く効果があるので、南側だけでも十分、木の印象は与えられます。ですから、玄関や南側の開口部など、よく目にする場所に重点的に使うことが多いです。それだと木材保護剤と脚立さえ準備できればメンテナンスが簡単にできますから、のちの施主さんの負担も小さくなるんです。(長崎さん)」

屋内に木を使う利点は、見た目だけでなく触覚に関わる要素が最も大きい点です。足裏の感覚は鋭く、厚みある材木や丸太を踏んだ感覚は記憶に深く刻まれやすいため、子育て世代には特に効果が高いそう。また長崎さんは、木の印象とデザインについての持論があると言います。

「木材が目を惹くのは家の中でも同じです。だから、もし壁が全部木材だとしたら、壁が迫ってくる圧迫感を受けるはず。木の家といっても、実は日本画や書道のような余白や空白が必要なので、クロスや漆喰でうまく抜けをつくることも大事なんです。またこれは家全体に関わることですが、素材を考える時は、その空間で『何が主役か』、その壁は『どんな用途か』を意識しなければいけません。(長崎さん)」

例えば、南側の庭に木を植えてデッキテラスをつくるとしたら、主役は庭の景色。室内から見えるよう、南の開口部を大きくつくろうという判断になります。インテリアとエクステリアをつないだ時に景色が重要になるならば、壁は額になる漆喰にして景色を絵のように収めるデザインが適切になるわけです。また、子どもの絵や習字を貼るという用途なら壁は扱いやすい木材に……というように、こだわりすぎず、あくまでも必要な場所に必要なだけ使う。そのほうがコストや見た目の効果、機能的にもお薦めなのだそうです。

まちに心を開いた木質化の家づくり

本文_木村早苗

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建築家・塚本由晴さんに聞く、
「木」の街並みづくり

近年、まちづくりと木質化の関係が見直されています。住宅だけでなく塀や柵などの外構部に木を取り入れることが、心地よい景観や人々の暮らしをつくる次世代の策になるとの考えがあるからです。そこで今回は、これからの住宅の在り方と街並みの関係について、アトリエ・ワンを共同で主宰する建築家の塚本由晴さんに伺いました。

近代の住宅形式の変化が街並みに与えた影響

建築設計のみならず、国内外のさまざまな街並みの研究をしてきた塚本さん。まちにおける住宅の在り方は、産業や社会システムの変化に大きく影響を受けてきたと言います。

「江戸の場合、資金を持つ商人たちが通りに沿って職住一体の町屋を建て外壁を漆喰で塗り込むことで防火性を担保。囲われた街区の内側にはもっと簡素な作りの長屋がつくられ、庶民は店子として住んでいました。戸建住宅は足軽屋敷みたいなのもありましたが一般的ではなかった。それが変わり始めたのが1920年代。実業家の渋沢栄一の息子の秀雄がイギリスの田園都市(※)に想をえて、田園調布の宅地開発をするのですが、その際に導入された住居の型が、近代家族のための戸建住宅のはしりでした。(塚本さん)」

※ 田園都市は、19世紀半ばにロンドンの人口過密と住宅問題の解決策として提唱された。田園地帯に職場と居住が融合した賃貸住宅を建て、家賃分で環境を整備する公共性の高い仕組みを持っていた。しかし日本の郊外住宅地の場合、投資した資金を一早く回収するために分譲が採用され、かつ職場の無い住居のみの町となった。

「近世以来日本には、仕事と生活を一つ屋根の下に住み分け、通りに対して軒を連ねた卓越した町屋という形式がありました。しかし1950年代に車が広く一般に普及すると、駐車場をとれない町屋の評価は下がります。車の無い時代に成立した形式だから無理な注文です。幅が狭く奥深く、隣と接しているので採光は道と中庭からに限られ、室内には明暗差があり、通りから敷地奥まで続く通り土間からは冬の冷気があがってくることも低く評価されるようになり、多くが取り壊されてしまった。そうはいうものの住居形式の反復が都市形態を導くという意味で、町屋ほど洗練された形式は日本にはなかったと言えます。町屋のように反復可能な、地域や用途に固有の建築形式をタイポロジーと言うのですが、それが明確な地域では、人々は自分のまちにどんな建物がふさわしいかを自然と理解していました。

しかし東京は、もともと各地から来た人々の寄り合い社会であり、関東大震災や第二次世界大戦のような大規模な破壊を経験し、かつ近代的な建設技術の導入もいち早くなされ、産業化によって住宅の商品化が進んだ都市。人々は自分の住む通りにふさわしい形式が何か知らない。

建築が文化の領域から産業の領域に移された結果が、現在の東京の街並みです。狭い敷地なのに境界に塀を建てるのも、土地の所有権に対する意識が強いからでしょう。人々が個の消費者としての自由を獲得するのに並行して、“まち”ではなく“自分の土地”に住む感覚が強まっていったからではないでしょうか。私が子ども時代を過ごした頃の茅ヶ崎では、まだ隣家との間に植え込みや低い木の柵があるだけで、子どもは自由に動き回っていました。現在東京の住宅地には1mほどの隙間が家々の間にあり、外国人を不思議がらせますが、これも所有権を明確化する意識の表れです。こうした所有権の成り立ちを追うと、物権を私と公に仕分けした明治維新後の社会制度の近代化まで遡れます。税金徴収を中央集権的かつ透明にしようとしたためです。

かつては、どんな場所にもコモン(共有地)や入会地(いりあいち)があり、住民が共同管理し、使い方を合議制で考え、利用権は平等にあるという互助の仕組みが存在していました。しかし、現在の戸建住宅の形式には、公私を区別させる風潮や社会システム、産業構造の変化が強く作用しています。そして結果的に人々に自分の敷地内を優先させ、街並みまで気を配る余裕をなくさせていったのです。(塚本さん)」

木質化を介した、地域や風土を活かす街並みづくり

「東京はまだ戦後が続いています。本来ならば、戦後すぐに都市計画をしてコンクリートの集合住宅で街区をつくれば、火災や地震に強いまちの考え方を都市から個人の住空間にまで一気通貫に落とし込めたはず。でも敗戦後の資金も主権もない状態では、復興を個人に委ねるしか方法がない。そんな状況を経て、1951年には住宅金融公庫と組み合わせた建築士制度が生まれ、住宅の構造や耐火の質を上げる施策が行われました。

その復興の方法が今も都市の大部分を決めているわけです。面ではなく個の粒で都市をつくっていると考えたら、気が遠くなる話ですよね。(塚本さん)」

本文_木村早苗

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